2020年10月30日
福岡市は、再開発プロジェクト「天神ビッグバン」における優遇施策の対象ビルの竣工期限を、当初予定の2024年末から2026年末までに2年間延長すると発表。 新型コロナウイルスの影響が続く状況にあるため、感染症対策等を行う事が期限延長の条件となる。
※解体・建設が進む「福岡ビル」(写真手前)、「天神ビジネスセンター」(写真左奥)(2020/10撮影)
福岡市が進める「天神ビッグバン」は天神エリアの老朽化しているビルの建替を促す再開発プロジェクト。
2015年に始動した同プロジェクトは、10年間で30棟の民間ビルの建替を誘導するため2024年末竣工を期限とし、容積率緩和等の優遇施策を実施していた。
今回、2026年末までの竣工期限の延長と新たな容積評価が発表されたが、換気・非接触の機能、距離の確保、通信環境の充実など、下記表の感染症対策の取り組みを実施する計画が対象となる。
複数街区にまたがるような規模の大きい再開発計画の場合には、個別に判断し、2022年末までに計画概要を市に提出することで、期限をさらに延長する。
換気 | 機械換気増強、自然換気導入、CO2濃度センサーなど |
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非接触 | タッチレスエレベーター、顔認証入退エントランス、非接触検温センサーなど |
身体的距離の 確保 | 大規模なフロアプレート、エレベーターの大型化・台数追加、 人数検知技術を活用した入室分散管理など |
通信環境の 充実 | 全館Wi-Fi、ローカル5Gなど |
その他 | 空気清浄・エアシャワー、抗菌素材、除菌・殺菌装置など |
福岡市は世界に先駆け「感染症対応シティ」になることを目標に掲げており、再開発と同時にwithコロナ・postコロナを見据えた感染症対策の強化によって、都市としての国際競争力を高めたい狙いもある。
また、福岡市は一定の都市機能がありながらも、東京・大阪などの大都市圏と比較して3密における感染リスクを抑える事ができる点も、集約型オフィスから分散型オフィスへの移行を考える企業にとってはアピールポイントとなる。
No. | 事業・物件名称 | 計画内容 | 竣工・開業予定 |
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1 | 天神ビジネスセンター | オフィス・商業 | 2021年9月 |
2 | 旧大名小学校跡地活用事業 | ホテル(ザ・リッツ・カールトン福岡) オフィス・住居・多目的空間等 | 2022年末 |
3 | 福ビル街区建替プロジェクト (福岡ビル・天神コア・天神ビブレ) | 商業・オフィス・ホテル | 2024年 |
4 | イムズ建て替え | 商業 | 2024年末 |
5 | 天神MMTビル建て替え | 商業・オフィス・ホテル(検討中) | 2024年末 |
6 | 福岡市役所北別館建て替え | 民間による再開発を予定 | 2021年12月以降閉鎖 |
7 | ヒューリック福岡ビル | 高級ホテル | 2024年末 |
8 | 天神西通りビジネスセンター・ 住友生命福岡ビル | オフィス・商業 | 2024年末 |
9 | 日本生命福岡ビル・ 福岡三栄ビル | オフィス・商業 | 2025年末 |
※建設が進む「天神ビジネスセンター」(2020/10撮影)
関連記事:建設が進む「天神ビジネスセンター(仮称)」【天神ビッグバン関連】(2019/4/26)
※建設が進む「旧大名小学校跡地」(2020/10撮影)
コロナ禍前の福岡市はオフィス需要と、インバウンドによるホテル需要の高まりが同時に進んでいたが、ホテル建設が多く、オフィス供給が追いつかずに空室率の低下が進んできた。 しかし、今年に入ると、空室率は上昇に転じ、少しずつではあるが、空室がでる傾向となっており、
コロナによる縮小移転や閉業、移転計画、新規開設の保留・見直しなども一因として考えられる。
アフターコロナの新たな働き方では、テレワークの導入が進み、オフィス不要の動きもあるが、ソーシャルディスタンスのため、人員はそのままで、より面積を広げる企業や、コロナ特需によって事業拡大の可能性もある。
これから、さらに市況・景気の悪化が続くかは不透明な部分が多いが、今回の感染症対策による優遇措置や期限延長で、再開発に踏み切るビルが増え、福岡が「感染に強い街」として、さらに企業誘致が進む事にも期待したい。