2019年1月31日
福岡市が進めるウォーターフロント地区(中央ふ頭・博多ふ頭)の再整備の事業計画「ウォーターフロントネクスト」の概要が明らかになった。 市はこれまで、ウォーターフロント地区(以下WF地区)を天神地区、博多地区に続く、新たな拠点として再整備をしていくとしていた。
※福岡市博多区沖浜町「博多港国際ターミナル 」(2018/12撮影)
「ウォーターフロントネクスト」は今後20~30年を掛けて、福岡市が「アジアのリーダー都市」を目指すプロジェクトの一環。
博多港周辺のWF地区の特性として、【MICE】(企業の会議・セミナー・国際会議・学会・展示会・見本市など)、【クルーズ】が挙げられるが、
昨今では、福岡でのMICE、クルーズ船寄港の需要の高まりに対応できない事で、年間800億円(市の推計値)の機会損失が生じている背景がある。
2016年に策定された再整備構想では、福岡都心部の国際競争力強化、MICE需要の増加に対応する供給力の向上、海辺を活かした賑わいの創出を目的としている。
MICEの開催が東京に次いで多い福岡市では既存施設の福岡国際センターやマリンメッセ福岡等が高い稼働率を維持しているが、施設が足りない状況であるため、催事自体を断るケースも増えている。
機能強化として、様々な展示に対応可能な「第2期展示場」(マリンメッセとの一体利用可)、大規模な催事の開催が可能な「WFホール(仮称)」を計画している。
博多港の2018年のクルーズ船寄港回数は279回(速報値)であり、4年連続の日本一。
今後も、クルーズ船の大型化が進み、2020年に向け寄港回数の増加も予想されることから、それらに対応出来る受入機能の強化として、
超大型クルーズ船の2隻同時着岸の実現を目指し、延べ床面積13,000㎡の新クルーズターミナルを民間施設と一体的に整備。入出国審査ブースも倍増する。
MICEやイベント、クルーズ船客等で人の往来はあるものの、WF地区自体に商業施設がベイサイドプレイス博多しかなく飲食施設や賑わいが不足していた事も課題であった。 新たな魅力となる賑わいや集客機能の強化として、複合商業施設やエンターテインメント施設、飲食店を計画。解体予定の福岡サンパレス跡地にはMICE参加のVIP向け高級ホテルを予定している。
※赤枠部分が再整備エリア
公共施設の整備・運営については、民間事業者のノウハウによるサービス向上、コスト軽減、効率化等を期待できるPFI方式・運営権制度を検討する。
市は公募を行い、2021年までに建設・運営の事業者を決定するとし、概算の整備費として合計で約400億円程度、再整備による新たな経済波及効果は年間2,000億円程度を見込んでいる。
※国際ターミナルの北西に位置する民間商業施設の建設予定地(2018/12撮影)
WF地区への交通機関はバスとタクシーしかなく、交通対策についても課題が多く残る。
福岡市は再整備にあたり、道路整備や地下⾞路整備による「⾃動⾞交通の円滑化」や公共交通専用動線、交通広場の整備による「公共交通の利便性向上」を挙げている。
現在検討中ではあるが、新たな交通システムの導入について、「ロープウェイ構想」に注目が集まっている。
博多駅とWF地区を結ぶ新たな交通システムは、市の検証ではロープウェイの評価が高い結果が出ている。市は10年以内の導入を目指しているが実現には課題も多い。
新交通システムが導入される大博通り沿いにはオフィスビルも多く、周辺オフィスの企業にとってアクセス面でのメリットも考えられる。
WF地区再整備による周辺の活況はもちろんだが、博多駅~WF地区間の今後にも注目したい。