【博多駅前エリア】の大通り沿いには、古くともオフィス街にふさわしい大型ビルが立ち並ぶ。博多駅に隣接する中央街は商業色が強まり、本エリアの賃料相場を引き上げた。2019年に福岡市は博多駅周辺再開発プロジェクトである「博多コネクティッド」を発表し、駅前一等地にある築古ビルの建て替え計画が進行している。現在、博多口を出てすぐの視界に入る好立地でも工事中だが、今後はその周辺でも数棟の再開発が進行中であり、イメージが一新されることだろう。
【筑紫口(博多駅東・駅南)エリア】には、規模は駅前には劣るものの、新幹線口・ヨドバシカメラのイメージも強く、大型ナショナルチェーン店(居酒屋・飲食店)が多いという特徴もある。一方では九州自動車道や都市高速への交通アクセスの評価も高く、社用車を保有している企業が多く見受けられることも特徴のひとつ。容積率緩和等が実現したが、筑紫口のロータリーも公開空地と歩道がより広く改善された為、更なるエリアの向上性も図られ、今年博多コネクティッドにより竣工するビルが1棟ある。
【呉服町エリア】は、オフィス街の街並みとしての環境整備が向上し、機動性溢れるエリアとなった。再開発ビルも昨年竣工し、オフィス街として様変わりしたエリアであるが、博多部(呉服町エリア)は元々日本の中世最大の貿易港湾都市、商人の街として栄えた町で、歴史ある寺社もたくさん連なっている。市はこれを別の目玉として「博多旧市街プロジェクト」とし、このエリアを国際的な歴史・伝統・文化を際立たせる観光地として町並み作りをする計画を打ち出し、2面性を持つ都市を目指して環境の整備が図られている。
また更には、博多区最北端であるエリアで観光船の寄港整備のためにウォーターフロント(再開発事業)計画も進められている。大型ホールや商業施設の整備はもちろんだが、これに伴う外国人観光客の輸送手段のプロジェクトも引き続き検討が重ねられている様子。いずれにしても、2023年3月開通の地下鉄七隈線の博多駅までの延伸工事に伴い、キャナルシティ周辺のエリア環境が整い始めており、博多エリア全体の将来性に大きく期待されていることは間違いない。
九州の玄関口「博多駅」
博多駅前の大通り
賃料相場は博多駅前エリアが若干高く、他の2エリアは駅前よりは割安物件が多い。ここ数年までの経緯をいえば、企業は事務所拡張傾向に向かうものの、定借(契約期間に定めがある借家契約)・旧耐震のビルはコンプライアンスで検討に難色が示されたこと、インバウンド需要によりオフィスではなく、ホテルばかりが建設されたことなどがある。また数棟のビルにおいて、取り壊しによる立ち退きがはじまったが、前述の理由で移転先が品薄状態となっており、更には「天神ビッグバン」により立ち退き先に対するオフィスフロアの面積不足など、これらの要因すべてが重なり一気に空室率が低下し、賃料は上昇した。
3年前までは、大型面積の空室物件は無く、賃料水準が坪当たり5,000円以上、上昇したビルも多数あった。特に大通り沿いの物件の空室は皆無に近く、2年前竣工の大型、ハイグレードビルは坪単価20,000円以上で満室稼働しており、築年数のある既存物件においても希少な面積帯(100坪以上)であれば坪単価18,000円で推移していた。ところが、昨今のコロナ渦によってこの流れが変化し、ビルによっては条件の交渉は一切出来なかったが、現在では交渉が可能となってきた例も多く、大型の空室も少しづつ増えてきたのがここ数年である。 支店経済である福岡だが、サテライトオフィスが促進される流れは少なかった。しかし、大手企業のリモートワークが定着してきた事で、大規模オフィスでの床面積の一部返却がここ数年で出ているのも事実。面積をコンパクトにした分、坪単価をあげていいビルへの移転を計画するという新築への移転理由法人も多い。結論をいえば、物件を探す企業からしてみれば、「適切な相場感になってきた」ということは間違いないようだ。
この地区には2008年以降20棟近くの新築供給があり、その内大型開発が10棟ほどあった。賃料についても当時、坪10,000円代半ばの設定になっていたが、リーシング状況が思わしくない時期であった為、賃料設定の見直しを余儀なくされた。これにより、既存ビルの面積によっては共益費込で8,000円を切るような条件でリーシングした時期もあったが、昨今では空室率も高水準に改善され、賃料の高騰が激化していた。
需要に対する空室の供給不足状態が続いている事から、物件確保の為の競争が激化し、募集条件以上の実績を上げているビルも少なくない。いずれにしても、未だ、どのエリアよりも立地・人気を含め1番のエリアであることに変わりは無いが、コロナ禍による空室が増えたのも事実で、大型ビルでは多少の下降傾向があった。
コロナ前に計画されてここ1~2年で竣工したビルは事業収支の見直しが必然となり、近年それらを実行したビルはようやく高稼働に値するところまで持ってきた様子も窺える。これらがここ数年の空室率や賃料相場に変化をもたらしたのも原因のひとつであるが、ようやく適正な賃料に落ち着いた状況で、企業の拡張傾向の話が数多くあることも大きな要因。新築大型ビルでいえば、天神の坪当たり30,000円と比較した場合、どうしても博多駅の25,000円弱の賃料の割安感は歪めない事実としてあり、エリア全体が高水準で稼働していて大きな変化がないのも事実である。
時期 | エリア | 物件 | 面積 |
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2024年2月 | 博多駅前4丁目 | エイトコード博多駅前ビル | 714坪 |
2024年3月 | 博多駅東1丁目 | コネクトスクエア博多 | 9,500坪 |
2024年3月 | 博多駅前1丁目 | 仮)L.Biz博多駅前 | 300坪 |
2024年6月 | 博多駅前2丁目 | 仮)伊予銀行福岡支店建て替えPJ | 910坪 |
2024年8月 | 博多駅前3丁目 | 仮)博多駅前3丁目オフィスビル | 282坪 |
2024年9月 | 東比恵4丁目 | 仮)東比恵4丁目オフィス | 1,000坪 |
2024年11月 | 古門戸町 | 仮)古門戸町オフィス開発PJ | 1,778坪 |
以降 | 博多駅前3丁目 博多駅前2丁目 博多駅中央街 博多駅前1丁目 博多駅前1丁目 博多駅前3丁目 博多駅前1丁目 |
仮)博多駅前3丁目PJ 仮)Walkプロジェクト(西銀本店ビル建替計画) 博多駅空中都市プロジェクト 仮)西日本銀行駅前1丁目ビル 仮)西日本銀行駅前1丁目ビル別館 仮)日本生命博多駅前ビル建て替え計画 仮)博多新三井ビル建て替え計画 |